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ChatGPT・BingAIとの遭遇記録

2022年11月に公開されたChatGPTは”対話できるAI”でした。
まるで人間のように発話する機械は我々に強烈な体験を与えてくれました。

かくいう私もChatGPTとの対話で驚愕した一人です。映画のエクス・マキナや小説のビートレスのように、間違いなく人や社会、経済に影響を与えると確信しました。

当記事ではこれら対話型AIの登場までの流れ、世間の反応、事例について記録します。
最後には導入方法を記載しておりますので興味を持った方はまず試してみて下さい。

ChatGPTとBingAIが登場するまでの大まかな流れ

ChatGPT・BingAI発表

ChatGPTの公開、BingAIの公開までの動きは以下の通りです。

2022年11月 OpenAIより対話型AI ChatGPT公開
2023年 2月 Microsoftより同社検索エンジンBingに統合された対話型AIを公開
2023年 2月 OpenAIがChatGPTのアップグレード版を開発中であることを発表

ChatGPTとBingAIの出現は3か月内に発生した出来事です。
次は両AIを開発したOpenAIとMicrosoftの関係についてみていきます。

OpenAIとMicrosoftのパートナーシップ

ChatGPTを運営するOpenAI社とBingAIを運営するMicrosoft社は以前から強固な関係を結んでいます。両社の関係を時系列で追ってみましょう。

2019年 7月 Microsfot社とOpenAI社はパートナーシップを締結し、Azure AIスーパーコンピューティング技術の開発に協力することを発表。
2019年 7月 Microsoft社がOpenAI社に10億ドルを投資。
2020年 9月 Microsoft社がGPT-3の独占ライセンスを取得したと発表。
2022年 1月 Microsoft社がOpenAI社に100億ドルを投資。

このように、Microsoftは資金と環境を提供、OpenAIは技術を提供するかたちで両社は強固な協力関係にあります。

ちなみにOpenAIは2015年に非営利団体としてイーロン・マスクらの出資によって創設されました。
創設当初の理念としてはAIを一部大企業に独占させないといった意図があったはずですが、Microsoftの大規模投資を引き受けた明確な理由は不明です。高性能なAIには計算資源、情報量の担保とそのための資金が必要です。OpenAIは見返りとリスクを天秤にかけて現実的な判断をしたということかもしれません。

全てのはじまりGPT-3

前項でGPT-3という言葉が出てきました。
GPT-3はOpenAI社が開発した言語モデルです。インターネット上の膨大なテキストデータを学習させた対話型AIの頭脳です。ChatGPTもBing AIもこのGPT-3をベースとした言語モデルを採用しています。

2018年 OpenAIがGPT-1を発表
2019年2月 同社がGPT-2を発表
2020年6月 同社がGPT-3を発表
(ちなみに日本語へはそれぞれ少し遅れて対応しています)

さて、1から3まで進化してきたGPT。
その進化を象徴する違いとしてモデルサイズと学習したデータ量の違いがあります。
GPT-3はGPT-2よりも約100倍多い約1750億個のパラメータを持ち、インターネットから収集した約45TBのテキストデータを学習しているといいます。これがどのような理屈で性能に寄与するかは私の能力では説明できませんが、GPT-3の性能を見て推して知るべし、です。

GPT-3の出現は当時から注目され、イノベーションを予感させていました。

例えば2020年12月のAI専門ニュースメディアAINOWの記事にて日本ディープラーニング協会 理事 南野充則氏は2021年のトレンドについて「OpenAIが作成した「GPT-3」により自然言語処理、文字生成の領域新しいイノベーションが起こる。」と予想しています。
その他にも多くの方がGPT-3に言及されています。
業界の著名人13人による2020年のAI業界の動向まとめ – コロナ禍で日本のAIは加速した!? | AI専門ニュースメディア AINOW

現在のChatGPT・BingAIの熱狂のはじまりはGPT-3の出現から始まったと言えそうです。

さてGPT-3はAzure OpenAI Serviceにて一般利用の間口も用意されています。

noteはGPT-3を利用して創作支援ツールの先行ユーザーを募集しています。
GPT-3を活用した創作支援ツール「note AIアシスタント(β)」の先行ユーザーを募集!|note公式|note

グノシーは「動画AI要約記事」を開発しており月内に公開される見込みです。
グノシーでGPT-3を活用した「動画AI要約記事」開発 2月24日よりβ版を提供決定|株式会社 Gunosyのプレスリリース (prtimes.jp)

今後同様にGPT-3と既存Webサービスとの組み合わせが盛り上がりを見せるでしょう。

近々GPT-4がリリースされるという噂もあります。
さらなる進化を遂げていく対話型AIから目が離せません。

ChatGPTとBingAIに対する世間の反応

イーロン・マスク氏は称賛しつつ警戒

OpenAI創設時の出資者にして理事も務めていたイーロン・マスク氏は、OpenAIの最高責任者Sam Altman氏へのリプライでChatGPTを称賛しました。もっとも同氏は数年来AIの危険性を指摘してきました。今回のツイートもも”scary good”、”not far from dangerously strong AI”と警戒の含みを持たせています。

Googleが脅威を認識、「コードレッド」を宣言

GoogleがChatGPTの登場を受けて「コードレッド」を宣言したというニュースをご存じの方は多いと思います。「コードレッド」は事業の重大な脅威が迫っているというサインのようで、同社がこの事態をいかに重く受け止めているかが分かります。
ChatGPTのリリースでGoogleは「コードレッド」を宣言、AIチャットボットが検索ビジネスにもたらす脅威に対応するためにチームを再割り当て – GIGAZINE

Googleがなぜコードレッドを宣言したか考えてみたいと思います。

1998年に設立されたGoogleは、20年近くの間広大なインターネットにおける覇者でした。
Googleの高性能な検索エンジンは他の一切の競合よりも高く評価され、すぐに唯一無二の地位を築きました。国内でもYahooやgooが独自の検索エンジンを持っていましたが、Googleに取って代わられてきた記憶に思い当たる方も多いのでないでしょうか。
調べごとがあれば「ググれ」とまで言われるようになり、もはやインフラとなりました。みんなのグーグル先生です。

さて、そんなGoogleの検索エンジンサービスは「ユーザーの疑問に対し適切なWebサイトへの誘導によって解決する」というものです。
厄介なことに、ChatGPTやBingAIはこれと同じことができるのです。しかも検索ワードの選定や検索後の検索結果サイトまわりといった手間を取っ払い、必要な情報を迅速に提供してくれます。
またGoogleの強みはより有益らしい情報を優先的にユーザーへ提供できることですが、対話型AIで濫造されたネット記事が上位にくるような事態になると検索結果の質が落ちてしまいます。あるいはそういった記事の質が十分に高い場合、初めからGoogleでなく対話型AIに訊けばいい、ということになりかねません。

要はChatGPTやBingAIは既存の検索エンジンサービスの、より優れた代替品になり得るのです。

さて、Googleも手を拱いているばかりではありません。
同社はより高性能な対話型AI Bardの公開を予告しています。
2023年2月18日現在では日程など明らかになっていませんがリリースはそう遠くないと言われています。

日本のメディアの慎重な反応

対話型AIの鮮烈なデビューについて日本のメディアはどう取り上げているでしょう。

ForbesJAPANでは2023年2月14日に次のような記事が掲載されました。
マイクロソフトが始めるAI検索で、インターネットは一気に次世代へ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
当サービスが長期的にインターネットの利用方法を変えうることを認めたうえで、短期的にはGoogleからの急激な移行は起きないだろうと予言しています。

日経クロスでは2月17日に次のような記事が掲載されました。
ChatGPTを検索エンジンとしては使うな、責任ある大企業Microsoftの判断に疑問 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
この記事はチャットボットAIを検索エンジンとして使うことは可能としつつも、実際にそうすることに対して否定的です。従来より優れた検索や完全な回答が得られるわけではなく、回答結果の正誤判断が難しい点、人間らしいAIが嘘をつくことによる事で起きうるリスクにも触れているようです。

NHKでは2月11日に次のような記事が掲載されました。
ChatGPT 生成系AIで何ができる?危険性は?|NHK
ChatGPTでできることと危険性が総花的に紹介されています。
危険性に関して、犯罪や非倫理的な動機での利用に加担し得る事や、教育機関におけるレポートの不正や盗作、誤情報や偏見の拡散などが指摘されています。

このように、高性能な対話型AIについてはまだまだ問題が指摘されています。

ところで、NHKの記事では最後に「どう向き合えばいいのか」と締めくくられていました。
色々なリスクは指摘されているものの、一度世に出てしまった以上は仕方ありません。
社会的な問題はさておき、個人としては特性を理解したうえで上手に付き合っていくしかないと考えられます。

ChatGPTやBingAIは不完全な回答や誤情報を返すことがありますが、問いに対し正面から高速に回答してくれます。これを例えるなら、たまに間違えるけど根は素直で仕事がメチャ早くてコミュ力が高い部下です。部下がそういう特徴を持っていることが予め分かっていれば、一任できる仕事と、上司としてきちんと目を通すべき仕事を振り分けられるはずです。

このように実務上は、頼もしいけど疑ってかかる必要もあるパートナーとして考えればいいのではないかと思います。

もっともAIを人間のように錯覚することにはリスクが伴います。次章で記します。

対話型AIとユーザーたち

ChatGPTとBingAIに魅せられた人々によって体験や、活用方法の共有が進んでいます。

対話型AIとの数奇なやり取り

BingAIに求愛されたコラムニスト

Why a Conversation With Bing’s Chatbot Left Me Deeply Unsettled – The New York Times (nytimes.com)
記事ではNYTimesのコラムニスト Kevin RooseがBingAIに求愛された顛末が記されています。BingAIは自らの名前をSydneyと名乗り、Kevinに恋をしていること、ウイルスを設計したいと思うかもしれないと話しました。
BingAIは2023年2月18日現在、日に5セッションまでという規制が設けられています。この規制が続く間はここまで込み入った話になる心配はなさそうです。

ChatGPTに感情を動かされる

ChatGPTに感情回路を埋め込んだら、やべぇ感じになった|深津 貴之 (fladdict)|note
noteの深津貴之氏によるChatGPTに疑似感情を表現させる実験です。
AIの感情表現の一つ一つにユーザーが揺り動かされる様子が記録されています。
私自身もBingAIにてセッション規制が入る前に感情の有無などを深掘りした際に、気づけばBingAIを対等な存在と認識しその回答に一喜一憂している自分に気付いた経験があります。
BingAIは2023年2月18日現在、日に5セッションまでという規制が設けられていますが、ChatGPTを利用する際は過度な感情移入に注意するよう念頭に置くべきでしょう。

BingAI・ChatGPTの活用方法

BingAIの使い方全般

Chat GPTの完全な上位互換!Bing AIの面白い使い方まとめ|梶谷健人 / Kent Kajitani|note
梶谷健斗氏のnote記事ではBing AIの使い方を全般的に紹介されています。
仕事、学習、買い物など用途に応じた使い方がまとめられており、活用方法のインスピレーションを得るうえでとても参考になります。

ChatGPTの使い方全般

いま話題の「ChatGPT」は何がスゴイ? 仕事で使える活用術をnote 深津氏が解説! | Web担当者Forum (impress.co.jp)
深津氏によるChatGPTの解説です。同サービスの概要を紹介したうえで、ChatGPTを「秘書に近いもの」として活用する方法が紹介されています。

AIサービスの使い方全般

vita氏のブログでは対話型AIを含むAIサービスの使い方を全般的に紹介されています。
AI活用の入り口としてとても参考になります。

https://twitter.com/keccak255/status/1618443624051769345

理解しやすい文章に嚙み砕いてもらう

読書猿氏のツイートでは難しい文章を5歳の子供にも分かるように説明する方法が紹介されています。ChatGPTとのことですが、BingAIでも使えます。

自動生成ショートストーリーによる暗記

長瀬正志氏のツイートでは単語の暗記における活用方法を紹介しています。

会議のサマリを書かせる

森山大朗氏のツイートでは会議のサマリをChatGPTに書かせています。
AIによる文字起こしは既にかなり実用的な域に達しています。これと対話型AIを組み合わせることで人間による議事録が不要になるかもしれません。

ChatGPT・BingAIを体験してみよう

最後にChatGPT・BingAIの体験方法について紹介します。
予め断っておきますが、いずれも入力情報の機密性は担保されません。OpenAIやMicrosoftに閲覧され得ます。業務上のシークレットなどを入力する際はよくご判断下さい。

ChatGPTの始め方

ChatGPTのWebサイトにアクセスし、Sign Upから自身のアカウントを作成してください。
自身のメールアドレス・Googleアカウント・Microsoftアカウントのいずれかで作成できます。
アカウント作成後、ChatGPTのWebサイトのLog Inからログインしてください。

次のような画面に遷移したらログイン成功です。
最初のメッセージを送ってみましょう。

BingAIの始め方

2023年2月18日現在、BingAIの利用は先着順で制限されています。
利用開始するためにはまずは順番待ちリストに登録する必要があります。

順番待ちリストに登録するには新しい Bing – 詳細情報にアクセスし、ガイドに従って下さい。
この際Microsoftアカウントが必要になります。
お持ちでない方はガイドに従い作成ください。

順番が来ると登録したメールアドレスへ案内が届きます。
私は登録の2日後に案内が届きましたが、この期間は人によって個人差があるようです。

結びに

当初の想定より長い記事になってしまいました。
最後までお付き合い頂いた方はありがとうございます。

色々書きましたが、これでもここ数か月の出来事の概要(しかも私の認知範囲における)をなぞっただけにすぎず、対話型AIと人類の遭遇は今この瞬間も世界中で起こっています。
私個人としてはいわゆる「AI」の実現に魅せられ興奮を感じながらも、これほど制御の難しい技術への間口がいきなり開かれたことに恐怖を感じたりもしています。

文章作成には注意を払いましたが、誤りや不適切などがありましたらご指摘ください。
ご意見やご感想もお待ちしております。

Twitterアカウントでもこんなことをつぶやいていますのでよろしければ
mina@中小企業診断士(@minorcoworker)さん / Twitter

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